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263ページより
フェンス越しに見える繁華街の明かりが
そんな今にも消え入りそうなコイツを照らす。
「・・・・・・ありがとう、なんて・・・」
下から照らすネオンの中で
十字架を握る手が、僅かに震える。
「こんな俺に・・・・・・、あんな風に、切り捨てた俺に・・・¨ありがとう¨なんて・・・」
ぼんやりと浮かぶ三日月が
静かに、そんなコイツを照らす。
「・・・いっそ、嫌われて・・・憎まれてた方がよかったんだ」
俯きながら、声を震わせながら
十字架を、ぎゅっと握る。
「¨翔¨」
久しぶりに呼んだその名前に
ソイツは、静かにうなだれながら僅かに肩を震わせる。
「泣く程好きなら、足掻けよ」
コイツにとって彼女がどんなに大きな存在だったかなんて、そんなの馬鹿で脳天気な俺にだって分かる。
・・・いや、
ずっとコイツを見てきた俺にだから
分かる。
「今のお前は、見てらんねぇんだよ」
何と戦ってんだよお前は。
なんでそんな風になっちまったんだよ。
お前をそんな風にしたくて俺はお前にマイクを握らせたワケじゃねんだよ。
「足掻けよ、翔」
これで正しかったのかなんて
そんなのは俺にも分かんねぇ。
・・・だけど、
だけど、
頼むから、・・・お願いだから
誰か、こんなコイツを
引きずり上げてやってくれよ。