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『レモンケーキ、母が昔よく作ってくれてたんです』

「お母さまが、ステキですね」

『でも、なかなか母の味にならなくて』

柾木さんの言葉に、もしかしたら柾木さんのお母さまは、想い出の中にしかいないのではないかと思った。

『正直作れば作るほど自信がなくなってたんです。でも、そんな時に咲羅さんがお店にいらしたんです』

「え、私?」

『はい。母のレモンケーキは僕が落ちこんでた時によく作ってくれてたんです。咲羅さんがうちの店に初めていらした時、僕にはその姿が元気がないように見えたんです。だから思わずメニューにはまだなってないレモンケーキを食べてもらおうと思って、』

そんな風にお店に入った時から見てくれてたなんて知らなかった。確かにあの時は落ち込んでいた。
そして、柾木さんのレモンケーキを食べて

「私、あの時、あのレモンケーキを食べて元気がでたんです」

『ええ、咲羅さんはレモンケーキを食べて幸せそうな笑顔を見せてくれました。その笑顔を見てあのレモンケーキを自信を持ってメニューに入れようと思えたんです』
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