「痛っ!」

咲良君からの甘いキスを期待した私は、不意に首筋を噛まれ、痛みに驚いて目を見開いた。

「奈々。ちゃんと目を開けて俺を見て。」
「咲良…君…怒ってるの?」

「怒ってるよ。」

咲良君の低くて冷たい声が耳の奥に響く。

(何に怒ってるの?)そう聞こうとした私の言葉を遮る様に強い力で両腕をベッドに押さえつけると、そのまま噛み付く様に首や胸元に無数のキスマークをつけた。

「俺が好きなのは紗世じゃない。」

その言葉を聞いて、私の目から涙が溢れた。

「でも私から離れるって言った。」
「言ってない。」
「紗世ちゃんをほっとけないって言ったじゃん!紗世ちゃんのそばにいなきゃなんでしょ?
私は2番目なんでしょ?」

「だから違うっていってんじゃん!!」

大声を出した咲良君は、私よりもずっと傷ついた顔をして私を見つめ、強く握っていた私の手首から力を弱めた。
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