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何されるんだろう。
恐怖のあまり震えていると、肩に何かが触れた気がした。

「ぇと……部長??」
部長が、私の肩に頭を乗っけていたのだ。
というか怒っていると言うより、むしろなんかしゅんとした雰囲気が出ているような……?
「ぁ、あの………」

  

……なんて?
聞こえるか聞こえないくらいかの微妙な声量でつぶやいた言葉は、決して怒りからくる言葉じゃなくて。
安心して、力が抜けるような心地がした。

「……はは、キモイやろ。こんなことしとって」
「キモい……?なんでですか?」
「どうせまた、“想像と違う”だのなんだの言うんやろ。もうこっちはこりごりやねん」
「……想像と違う?」

部長の言うことがやけに心に引っかかった。
想像と違ったっていいのに、部長は想像通りでいなきゃいけない、というような言い方をする。

「……私は、キモいとは思いませんけどね」
「……?」
「かっこいいと思います。想像と違うっていうのは、それだけいいところがたくさんあるって意味じゃないですか」
息を呑む音が、耳元で聞こえた。
だんだん、肩が湿っていく感触がした。

「……もしかして、泣いてますか?」
「……泣いてへんし」
「じゃあ離れますよ?いいんですね??」
いつもの大人っぽい部長が、やっぱり人間なんだって、完璧じゃないんだって。なんだか、身近に感じるような気がして。
ちょっとからかってみたらどうなるんだろう、と言ういたずら心が湧き上がってきた。

「ほら、泣いてないならいいんですよね。離れちゃいますよ?」
「………無理」
「いや、無理とかないです」
「無理なもんは無理やし」
「泣いてないんならいいでしょう?」
「ええやん別に………」

部長の手が、背中側に回ってきて抱きしめられるような体制になる。
部長の体温が伝わってくる。

「もうちょっと、このままでいてや……」

そう言った部長のことを、不覚にも可愛いと思った。
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