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「……起きてる?」
「んー」

 さっきから「んー」しか言っていない。

 Tシャツの中の手が、また動き始めた。今度は胸を触られて、頭が軽くパニックになる。ナイトブラの上からとは言え、桔平くんの体温を感じて、恥ずかしさで汗をかいてきた。

「き、き、桔平くん。さ、さわ、触ってるから」
「愛茉、やわらけぇ……」
「お、起きてってば、桔平くん」

 寝ぼけていても、ちゃんと私の名前を呼んでくれるのは嬉しい。いやいや、そういうことじゃなくて。このままエスカレートされたら困るから、必死に桔平くんの体をゆすった。

「……朝?」

 よかった。ちゃんと目を覚ましてくれた。
 
「うん、朝だよ」
「何時~……?」

 桔平くんは私から離れて、這いつくばるようにしてサイドテーブルに置いているスマホへ手を伸ばした。そして、うつ伏せの状態でそのまま停止する。……嘘でしょ、また寝た?

「……桔平くん?」

 やっぱり、返事はない。
 寝起き悪すぎ。ていうか、可愛すぎ。あぁ、背中に抱きつきたい。でもグッと堪えて、また桔平くんの体をゆすった。

「桔平くーん、起きて」
「は~い~……」

 もう、なんなのよこの可愛さ。

 ようやく起き上がったのはいいけれど、桔平くんはベッドに座った状態で、ただボーっとしている。目が半分くらいしか開いていない。

 サイドテーブルに置いていたスマホを見ると、まだ8時前だった。

「目、覚めた?」
「……少し」
「ごめん、起こしたのはいいけど、8時前だった。もう少し寝る? 桔平くん、あんまり寝ていないよね」
「いや……せっかく愛茉がいるから起きる」

 のそのそとベッドから出て、洗面所へ向かう桔平くん。すっごくフラフラしているんだけど……いつも朝はこんな感じなのかな。

 普段はビシッとオシャレに決めているのに、頭ボサボサで眠そうな顔をしているのが、たまらなく可愛い。桔平くんが、私の部屋着メガネ姿を見て可愛いって言ったのも、こういうことなのかな。普段と違う、気の抜けた姿というか。
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