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「俺といるのに、他の事考えてる?」「⋯っ!リトさん⋯近い⋯」ブランコのチェーンが、カシャンと金属音を立てる。いつの間にか目の前にあった綺麗な顔とその近さに驚いて、反射的に離れようと地面を軽く蹴る。けれど、彼がチェーンを握ったことでその動きは阻止されてしまい、真っ赤な顔を隠すこともできずに数秒の間見つめ合う。「⋯離れてほしい?」「⋯っ、はい⋯」心臓がありえないほどのスピードで全身に血液を送っている。こんなの、絶対に身が持たない。「それは、俺への緊張からなのかな…」「⋯え?」やけに静まり返った声色で問いかけられて、恥じらいよりも戸惑いが上回り、揺れる瞳を合わせた。吐息がかかりそうなほど、少しでも動けばとんでもないことが起きてしまいそうなほど近いのに、彼の瞳を見たら暴れまわっていた鼓動が収まって思考も冷静になってくる。「⋯どうしたら、俺に振り向いてくれるんだろうね」