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これで良かったんだ。

これが良かったんだ、きっと。

腑に落ちる気持ちと、落ちる気持ちを同時に認識する。

まるで暗くて深い海に自重の限り沈んでいくみたい。

この気持ちを、私は知っている。

沈み行く間に、唐突に始まり予期せずに終わった短く濃かった日々が脳裏に蘇る。

思い出すのは、理人さんのことばかり。

「仁奈…あのね」

「うん?」

「私、失恋した」  

そう言い終わると、次々に瞳から雫が零れ落ちた。
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