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わたしの名前を呼ぼうとしたその唇に、自分のそれを押し付けた。

2回目は、動揺する側じゃなくてさせる側だ。
やられたことはやり返せ、くらいの気持ちじゃできないことは、解ってほしい。

無駄に色めくリップ音の後、離れた距離の向こうで“やられた”って間抜けな顔をしているユウキを見て、わたしはつづけた。

「今逃がしたこと、忘れないでね」

「おま、」

「後悔しろ、バァカ!」
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