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 大木の側壁に、傷が付けられていた。石で付けたような、その傷跡は、確かに意味のある言葉をハッキリと残していた。

おぶ、あいたい

 それは、まるで父からあの人へ送られたメッセージそのものだった。

 会いたい。会いたいよ、オブ。

『イン、イン、イン、イン、イン!!!』

 俺はその傷に体を寄せると、食い入るように見つめた。あの時のスルーさんのように、俺の自我を保つ為に“人形”と化していた心が、一気に“ひと”へと戻っていく。
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