月季花

降りしきる雨の中、君を
毎日、夢に見る。
君が俺の腕からすり抜けていく夢。

傘も差さずに空を見上げて、微笑んでいた君。

『雨の日に、ここで待ってるから』

――雨は、嫌いだ。

抽象的な言葉で語られる物語。

「鞄……落としましたよ」

雨の中で出逢った女性。
彼女は傘も差さずに微笑んで――……

雨の降りしきる街。
背景は薄暗く、空は灰色の雲に覆われて、冷たい涙を流しています。

暗い景色。それゆえに雰囲気は暗く、雨に濡れて冷えた肌の感触を思い出しました。

雨の中で待つと言った彼女。
雨の中で出会った二人。

「傘、ありがとうございました」

冷えた彼の心に芽生えた、“感情”。

「俺、貴方に……会いたかったんです」

詩的な言葉、淡々とした文章。
不思議な偶然の出会いは運命的でロマンチックで、とても綺麗でした。

雨にけぶるような謎に包まれたこの物語はまだ結末が見えていません。

哀しく、どこか美しい。
この雨が晴れる時、彼の心にはどんな想いが残っているのでしょうか。