栗栖ひよ子

舞台を見ているような作品
まるで舞台を見ているような作品でした。

主人公たちの日常と、舞台の脚本がシンクロしあって……。

久しぶりに、新鮮な携帯小説を読んだ気分です。
良作に出会えました!

演劇にシンクロしながら恋愛が進んでいく……という設定で、この作品もそのまま舞台の脚本にしてしまえそうです。

演劇部の面々の恋愛事情が、演じる舞台の脚本と複雑に絡み合い、リンクしていく表現方法を、最初から最後まで貫いた作者様に、感銘を受けました。

愛が陸斗先輩に対して決心した「先輩の言葉はすべて台詞だと思う」「舞台が終わるまでの恋人」
も、切なくて……。

愛と陸斗先輩の役者魂、頑張りに感動し応援しながらも、伝わらない思いにヤキモキして。

脇を固めるキャラクターたちも、脇役だから印象に残らない人物では決してなく、
それぞれにきちんと役割があり、短編で多くの登場人物を出しながらも、無駄がありませんでした。

特に、波子役の由美先輩の存在感が際立っていたように思います。

恋愛小説というだけでなく、純文学、青春小説とも言えるような良作です。

ぜひオススメしたいです。