うのたろう

夏川さんという人、おもしろいという物語
感想はシンプルに、おもしろい。

それにつきると思う。

短編連作のかたちでつづられる主人公・咲と夏川さんの甘い時間のひとコマひとコマ。

それもショートショートほどの短さ、淡白さが印象的だ。

物語のなかに事件が、とくにあるわけではない。

ふたりの日常が、回を追うごとのわずかな成長と進展とともに描かれているのみである。

構成を短編連作のかたちにしたのは、この作品にかぎって大正解だ。

さまざまな角度で遊びをつけられる(じっさいに作者も遊んでいて、その演出がかなりにくい)。

また、文章もかなり書き慣れている印象。
序盤で連発していた体言どめには正直リズムの失速があったが、内容からして、これも作者の作戦なのではないかと思うのは穿ちすぎだろうか。

なににせよ、かなり上質な物語であることは間違いない。

はっきりいわせてもらおう。

おもしろいぞ。
これは。