うのたろう

体育館の恋と友情
洗練された文章。
構成もうまい。
リズムやテンポもひじょうによく、ひとつもつかえずさくさく読める。

物語の主人公・桜木晴香は女子バスケ部唯一のマネージャー。
いつもとなりのコートで練習をするバレー部所属の、浅田智之先輩に片想い中。

物語は、べたべたな恋愛ものというより、友情ものニュアンスが強い。
ハルにやさしくするバスケ部の先輩がたの存在が、物語の世界をにぎやかにする。
恋愛ものにありがちな、盲目で閉鎖的な世界観とは明らかに一線を隔している。

ところどころの見せかたもうまかった。
読者をたのしませるすべを、きちんと理解しているのだろう。
ハルが浅田先輩のもと彼女・由紀たちの集団に因縁をつけられ、暴力をふるわれるシーンには、どっぷりと感情移入してしまう。

個人的なベストは、オチのつけかた。
うそっぽい幻想じゃないリアルさがとてもよかった。

明言はされていないが。
泣き寝いることを選んだハルの心は、決して単純なものではない。

いやな思いとまわりのみんなのやさしさを心のなかの天秤にかけた結果のこたえだ。

このニュアンスがたまらない。