うのたろう
コメディタッチと技術力
結婚というテーマ小説。
紆余曲折を経てのプロポーズ。
ふつう重くなりがちなテーマだが、この作品は違う。
物語はコメディタッチで、思わずにやけてしまうような、そんなやさしい空気につつまれている。
同棲中のカップルの結婚までの道のりを、主人公・雪乃の気持ちとともにコミカルに描いている。
章を雪乃の作戦ごとに区切っている手法も個人的には好きだ。
章ごとのお約束のラストの一行。
ここに作戦結果が、雪乃の言葉でひとこと表示される。
これがたまらない。
読み手にとって「待ってました」の一行である。
また構成もひじょうによかった。
ぶつ切りの作戦をただつなぎあわせているわけではない。
物語に重要なつなぎを文章のなかにこっそり混ぜている。
へたをすればただの日記の連続にもなりかねない手法だが、この作品は作者の高い技術力で、きちんと小説に昇華されている。
個人的なベストは悪役・田村の登場から処理にいたるまでの流れ。
物語序盤で彬との会話のなかだけででてきた会社の話が、すばらしいジャブになっている。
おすすめだ。