むにえな

そして、クリスマスが始まる…
唐草模様の袋を担いだサンタクロース服の男が、ベランダに現れる。
そんなクリスマスの出来事。

まず、シチュエーションが実に面白いのです。
情景を目に浮かべると、そのちぐはぐさに心惹かれます。

怪しい人を部屋に入れるのは無茶と言うものですが、主人公の人恋しさの現れであるとも考えられました。

主にキャラの心情を描いていく小説ですが、描写が端的なために不明確な部分もあったようには思われました。
主人公の心情の変化が、理解はできても共感までには至らなかったので。

情景描写はが少ないので、その点からはクリスマスらしさがわかりませんでした。
背景が見えにくいと言えるでしょうか。
そのぶん、サンタ服や料理がよい意味で異質にも感じられました。
秘めたところがあるけど、時計の針がぐいと動き、そしてクリスマスが始まる――。

ふたり分の食事の意味が変わる点が、いちばん印象に残りました。