うのたろう
読むことで体験できる不思議な感覚
物語のベースは他愛のない中学生の文章なのに、なぜだろうか、ふにゃふにゃしてない。
どこかしっかりとして、なかに一本芯がとおっているかのよう。
いい意味でいびつ。
そんな不思議な「空気にのまれる」作品で、はじめから終わりまで一気に読まされてしまいました。
はじめに感じた、なぜだろうと思う不思議な空気。
それは、あとがきを読んですっきりしました。
中学生に書いたころの作品を、おとなになってリメイクしたとのこと。
なるほど。
文章の勢いはそのままに、きちんと小説として高品質に仕立てなおしている。
作者さまの作戦勝ちといった感じでしょうか。
発想がすごくおもしろい。
内容は卒業式を間近にひかえた少女の一人称で語られる恋物語。
地の文に、ところどころ詩のような表現があり、胸をくすぐられるような感覚におちいります。
とくにページごとの末尾の表現は、勢いだけでは決してでない、心を揺さぶるすばらしいものになっています。
ライトな感覚で読めるのに、しっかりしびれる恋物語。
そんなすてきな作品でした。