麻井深雪

くるくると変わる世界観
「一緒に散歩をしよう」と幼い頃の約束を果たさずに自殺していた母。
そのことが原因で女性不信になってしまった海都の物語。

積極的に迫ってくる同級生の瑞穂に感じる思春期ならではの擬似恋愛。
男としての身体の反応なのか、それとも恋か。
物語はちょっぴり甘酸っぱく、青春一色です。

その後出会う教育実習生の奈緒。
同じ感性を持っていると感じるその心は恋なのか。
恋のようで恋まで発展しないゆらゆらとした微妙な感情が上手く描かれていると思います。

ところが明日香さんの章で明かされる衝撃の真実は重く、物語は一気に緊迫した空気に包まれます。
こんなシリアスな展開が待っているとは驚かされました。

一体どうなっちゃうんだろう、と思ったところで元来の明日香さんのお気楽キャラが発揮され、緩む空気に笑いすらこぼれます。
ラストに至ってはコメディ色すら感じられ、思わず笑ってしまいました。

物語の始めと終わりの世界観の違いに違和感を覚えるか、それを受け入れて楽しめるか。
私は面白いと思いました。

ぜひ最後まで読んで確かめてください。