無名

内容は悪くないのですが……
相当重い事情や状況のはずが、文体や構成の所為で深刻に見えない。

「信はとある女に弱味を握られている」ことはクロが信と一時的に仲違いした原因、信がクロに執着的になった原因のはずです。それが早期に解決・納得しすぎてしまい物語のキーパーソンというよりは一過性の悪役のようで陳腐に思えました。誘拐という展開も突飛ですしそれを信の親に報告しにいくシーンはまるでギャグシーン、とても親の態度ではないです。

それと緊迫感のある監禁の場面の「ニャー ニャー クロの声」は酷い。ニャーという効果音ではなくそれがどういった風に信の耳に届いたのかひとつ文章が欲しいところです。「僕と彼女しかいない部屋のはずなのに、何処からか猫の鳴き声が聴こえる」などと適当な文章を差し込んでみてください。

勿体ぶったほうがいい秘密は先に晒し、勿体ぶらなくてもいい秘密は後回し、深刻なシーンをギャグシーン風に、これは文章力ではなく構成からの失敗です(読んでいて肩透かし感が否めない)。順序を考慮して重大なことにそれなりの緊迫感を持たせる文章力が欲しいかな、と思います。全体的に陳腐で実力不足が目立ちます。