遠野ましろ

孤独から目覚める、愛。
主人公の目を通し丁寧に描かれています。恋に落ち、共依存し立ち直る流れは実に自然。Snow whiteのくだり等胸にジンと来ました。

甘めと思いきや、徐々に見えてくるカズキの暗部、ななの過去。隠れるその闇は深い。

二人の『哀』が描かれる中、対照的な『喜』『楽』の会話が効果的。WAYと高校の人々がまた素敵。夜中の通販番組など生活感含む描写も○。

一方。『なな』視点なのに、他の誰かに人物や物事を説明している文章がやや多いかと。

また、章節の切替えの直後。主人公の独白に複数の出来事を詰めがちな箇所も。(例:P.22)説明を省くか、なな以外の誰かに言わせたり行動させる表現も交えると、色々な事がより際立つかもしれません。

ファーストコンタクトはサングラスの男性の方が印象に残りました。カズキは主人公が惚れる相手なのですから、ぐっと惹き付けるポイントが最初に欲しい。後々彼の魅力が存分に伝わるだけに惜しく思いました。

ですが、バーの前で行動に出た辺りから完全に心を持っていかれました。夜中に読み始め朝方まで一気読み。二人の恋に溺れ、魅了され。読む手が止まりませんでした。