うのたろう

物語に引きこむ力
一行目がでたらめにうまい。
冒頭で主人公のひとり・サヤカが吐いたせりふである。
これは名言中の名言だった。
この一文だけで一気に物語に引きこまれてしまう。
それほどのパワーがあった。

さて。
物語は三角関係を軸にした短編である。

こどものころからの仲のいいおさななじみだった、イツキ・サヤカ・ケイスケの三人は、そのうちのひとり・ケイスケが死んだことによりバランスを崩してしまう。
ケイスケを好きだったサヤカが壊れ、サヤカを好きなイツキはそんな彼女の姿をただ見守るしかできない。

全編がイツキの一人称で語られる物語は、冒頭のサヤカのせりふを軸にじょじょに広がり、奥ゆきを増し、展開されていく。

クライマックスでイツキがサヤカにすべてを話すシーンも必見だ。
おおげさに見せているわけではないのに、圧倒的に迫力がある。

イツキのせりふに対してのサヤカのリアクション。
そしてそれに対するイツキのさらなるせりふ。
すばらしかった。

うまい部分に対しての荒さもあるが。
それにも増して、見どころが満載の作品なので、ぜひ一度読んでみることをおすすめする。