うのたろう

やさしいな、すごく
やさしいな、すごく。

そんな雰囲気が香ってくる作品だった。

これが作者があとがきでいう「透明感」なのだろう。

主人公・愛の回想からはじまり、物語は現代へともどってくる。

愛には小学校5年からつきあっていた渉という男子がいる(この「つきあっていた」というあたりがなんともいえずかわいらしい)。

小学生からのつきあいは、高校生のころ家庭のつごうであっさりと終わりをつげて月日がたつ。

作品ではふたりのこと以外、日々の暮らしが密に書かれているわけではないが、彼女のすごした10年をいっしょにタイムトラベルしたような気分になった。

「こんなこともあったんだろうな」なんて想像しながら、彼女といっしょに思いにふける。

ラストで愛は渉と再会する。

この再開もわざとらしくなくていい。

すごく自然な等身大だ。

こんなペースでおとなになったふたり。

最後にはさわやかな風が丘のうえを抜けたように感じた。

おすすめだ