by
「そんなこと気にしなくていいんだよ。でも……気にかけてくれてありがとう」

「……おぅ」

 どこかソワソワした様子で、決まりが悪そうに黙って頭を撫でられる火虎に頬を緩ませながら、杏咲は言葉を続ける。

「ふふ。火虎くんも、もっと甘えてくれたら嬉しいなぁ」

 杏咲の言葉に、今度は火虎が瞳を瞬いた。けれどきょとんとした顔を見せたのはほんの一瞬のことで、今度ははにかみながら、気恥ずかしそうに後頭部を掻いている。

「……まぁ、たまには子ども扱いされんのも悪くねぇかな」

 耳に届いたその言葉に、杏咲は穏やかな笑みを返したのだった。
242ページより