誰もが振り返り、見つめ合った途端恋に落ちてしまうと言われる公爵令嬢がいた。
彼女が歩いたその場所には花の香りが広がり、鈴の鳴ったようなその美しい声音に誘われ鳥たちが集まり、その美しい笑顔は病人をもたちまち元気にするとまで言われていた。
この国の中枢を任されている大臣の1人である父を持ち、優秀な兄と社交界の華と呼ばれる美しい母に可愛がられる彼女は、今年卒業となる王立学園もトップの成績で卒業する予定。
そんな彼女には、婚約者がいない。
あまりにも彼女の婚約者の立場を狙う人間が多すぎたためだ。
彼女の婚約者はこの国の王太子?それとも宰相の息子?いや、もしかすると優秀と有名な公爵令息かもしれない。
人々の予想が過熱する中、彼女は恋に落ちた。
…それは、誰?