月と星と桜と君と。

作者歌野瑠茶

毎日、いつの間にか月が出て、いつの間にか星の位置が変わる。
そんな当たり前の時の流れが、2人を引き裂く。
時が迫る中、2人はどう生きていくのか・・・。

「ねぇ祐介、もう春だね、桜、見れるかな」
「なぁすみれ、また、桜が咲いたよ」

君は空を見て、指を指す。

「見て、昨日は星があそこにあった」

「そんなに大きく変わらないだろ星なんか」

「ロマンがないな!男のくせに!」

「俺は基本ロマンはないよ」

「つまらない男だー」

「君は時々失礼だな」

いつもと同じような会話。

それですら、大事な会話。

星にはなりたくないと言った君の言葉が、今はすごく重たく感じる。ケタケタと子供のように笑う君の顔が、いつか霞んで見えなくなると、時々思う。そう思う度に、どうしようもなく苦しくなる。ずっと隣で笑っていて欲しいのに、君はまたそうやって消えそうな笑顔を残す。

どこに行ったんだろう。桜が見たいと言っていたっけ。一緒に、見に行こう、来年も再来年も。その言葉に君はまた笑って、「見れるかな?」って泣いたんだ。

ねぇ見て、月が綺麗だ。夜でも桜が光って見えるよ。