「彼女は悪い女だった」
そう語るのは道先案内人。しかし、その言葉とは裏腹に、その表情はまるで美しい宝物の入った宝物を開けて宝物を取り出した時のような、幸福と懐古の入り交じったものだった。
狂気に堕ち、飲み込まれた男の一時取り戻した正気。その口が謳うのはかつて幸せだった時の話、過去の話。
「彼は幸せ…