作家だった父の死で、色が見えなくなった僕。
 僕に出会って色が見えるようになった、色盲の彼女。
 僕らは互いに行き違ってたからこそ、お互いに惹かれて。
 そしてお互いに間違っていたからこそ、たった一つの共通点──「青い視界」に、人生を狂わせていく。
 これは、どこまでも「普通じゃない」僕らが、普…

 色が見えなくなっていく彼女は僕に恋をして。「普通に」色が見えていなかった僕は彼女に恋をして。

 僕は彼女以外の色を手放した。


 見えなくなってく世界と、見えるようになっていく彼女の世界。

 なんて理不尽なんだろう。

 誰かの日常は、別の誰かの非日常で。そんな交われない僕らだから、何が「普通か」だなんて分かりっこない。


 僕らが見えてる色が、他の人には少し違った色に見えていて。

 けれどそれを皆が、概念的に「青」と言うのなら。

 この世界の「普通」はきっと──ありふれた宝物と同じ顔をしているのかもしれない。