ユートピアまであと一歩

作者W教授

 2060年、人類は空前絶後の生存の危機に遭った。2040年から、地球温暖化で酷い気候変動が起きているせいで各国は資源を奪うために戦争を発動した。色んな問題が重なり、世界の人口は30何億人減ることになった。しかも、劣悪な環境で生まれた若者たちは性欲と繁殖力が非常に低い。

 人間の絶滅を防ぐため、…


 2060年、人類は空前絶後の生存の危機に遭った。2040年から、地球温暖化のせいで酷い気候変動が起きている。洪水、旱魃、雪災など絶えない、疫病と飢饉が人間を苦しめたせいで、各国は生存資源を奪うために戦争を発動した。色んな問題が重なり、世界の人口は30何億人減ることになった。


 泣き面に蜂。残った人間は徐々に性欲と繁殖力を失っていった。出生率は凄く低くなっただけではなく、新生児の男女比もとても不均衡になった――女性は七割で、男性は三割だけだ。男性の新生児死亡数も女性のより高い。科学者の計算によると、そういう問題が続けば、人類の遺伝子プールはどんどん小さくなる。もっとも早い場合は、百年後、全人類は繁殖力を失い、或いは遺伝子疾患がある子供しか産めないまでに至るらしい。それが人間の終末なのだ。


 人間の絶滅を防ぐため、世界の主要国は「人択計画」を行うと決意した。遺伝子組換えと人工生殖の技術で、優秀な知力と抜群の体力を持ち、劣悪な環境でも生存できる人間を創ろうと考えている。


 「人択計画」の第一段階は、遺伝子が優秀な若者を選んで、色々な方法で彼たちを好きなだけ交尾させる。そして彼たちが自然に繁殖する場合のデータを集めて、人間の繁殖力と遺伝子の仕組みを操るキーポイントを探す。


 日本で初めて選ばれた「人択計画」の参加者は十人の大学生だ。その中で女性は七人、男性は三人。彼たちの大学は豪華なホテルを改装した「未来知見学院」だ。彼たちは「異性に求愛」という任務を受け入れた。毎日貴族のような生活を送り、頑張って勉強しながら、全力で遊んでいる。卒業後、高級官吏になり出世できる。


 被験者の生活は幸せだ…表面的には。でも、計画の次の段階は、被験者に薬物とウイルスの実験を行うものだ。遺伝子のデータを集めると同時に、彼たちの体を改造する。実験は未知のリスクが沢山あるので、政府はもっと多くの被験者を募集して、彼たちの遺伝子と実験中の反応でレベルを分けるつもりだ。レベルの低い者は「培養者」になって、初期の最も危険な人体実験を受ける。レベルの高い者は「最終被験者」になって、「培養者」の実験結果で改造される。最後は、エリートというエリートしか生存できないかもしれない。


 ユートピアへの列車はもう発車した。第一世代のエリートの中で、幾人が列車の燃料になるのか?幾人が終点に到着できるのか?