世界は、人類史上最も安定した時代を迎えていた。
言語や文化は違えど、誰もが同一の思想を有しているのだ。
前世を讃え、現世を尊ぶ。
そして—————————
「来世」を信じていた。
定められた時に、約束された来世へ旅立つことこそ、彼らのすべてだった。
子どもたちは、七つ歳の洗礼を受けることが義務付けられ、その場で「適正寿命」が告げられる。「寿命」でこの世を去れば、来世は真に幸福なものになると信じて疑うものはいなかった。
【例外】を一つ、除いては。
【例外】の一人である
来世など、最も信用できぬ幻であると識っていたから。
「来世」を信じぬ例外…
それは、死者である。
医院長の
死んだ者の中には稀に、神に見初められる者がいる。選ばれた彼らは、不死者として来世へ逝く道を失い、更には、「黄泉の国」で発生する憎悪を宿した人間が転化した悪霊を払う義務が生じることになる。しかし、その代わりに特別な三つの恩寵、「特殊能力・二周目の権利・許可証」が与えられるのだった。
彼らは二回目の現世を周回し続ける「周回者」である。
ある日、ノアのもとに1人の少女が来院する。「世界を変えたい」と願う少女・
一周目の記憶を失っていたノアは、様々な人との出会いを経て、少しずつ記憶を取り戻していった。記憶の断片を掴むごとに、世界に対する疑問は増えていく。洗脳と化した「寿命」と世界の謎を解き明かし、「世界を変えるため」に奔走する。