義母に虐げられて育った二階堂文子。祖母から自分亡き後、家から逃げよと遺言を残される。そして家を出た文子。祖母に託された『二階堂家に恩を返す』という手紙を頼りに隣町の神社に行く。そこにいた狐面の男、源之丞は、人嫌いで文子を追い返す。しかし二人は惹かれあっていく。

「ここにいたければ、いれば良い。だが、俺を見るな。それだけだ」

「はい……」


そう言ってあの人は部屋に入ってしまった。


冷たい声。

静かな背中。


私はそれをじっと見ていた。


どこにも行き場のない私。


でも、あの人の方が寂しそうだった。