抜き差しならない俺たちの関係

作者奈月沙耶

優しい両親と明るい姉と、学校の成績も悪くはなく好きな進路を選べて。そんな充実した日々をすごす紘一の密かな苦悩は実は自分が養子であるということ。

血の繋がりがないと知る前から惹かれていた姉の千鶴は、姉弟であることを強調し過剰なスキンシップを求めてくる。疎遠になっていた幼馴染の香澄も紘一にアピールし…

「姉貴じゃないなんて言って悪かった。ごめん」


 俺にとっては否定が肯定なことを、否定する。


「そうだよ、私はこうちゃんのお姉ちゃんなんだから。それは絶対なんだから」


 あくまで肯定し続ける者の強さで、千鶴は断言する。この強さに俺はきっと勝てない。