柴原 恋音(しばはら こと)、16歳。
好きなことは読書にゲームに映画鑑賞。
アニメにドラマに本屋めぐり。
自分がする恋愛よりも、
フィクションの方がずっといい。
いつしかそんなふうに、恋愛より趣味に重きを置くようになっていた。
小さい頃からおしどり夫婦で有名な両親の振る舞いを見て育った。
いつか私も、と恋愛に夢を見ていたこともあった。
でも、いつからか夢は夢、現実とはかけ離れたものであると目が覚めて、私に恋愛は必要ないと気づいてしまった。
だって物語の中の方がずっとすごい。
普通の女のコがお姫様になったり、
突然魔法が使えるようになったり、
男装して男子校に潜入してみたり、
そんなの、現実じゃ絶対ありえない。
だから私に夢物語なんて必要ない、
どんな物語もフィクションで賄えるのだから。
そんな風に、自分から恋愛事は突き放してきた。
たくさんの物語を読んできたから、
お恥ずかしながら理想が高くて。
告白されても、
転校生が来ても、
本屋で偶然同じ本を手に取っても、
何か違う、って思って。
告白は目を見てしてほしかったし、
転校生は恋愛そっちのけでバスケ三昧で、
本屋で同じ本を手に取った人は私を一瞥して去って行った。
現実はそう甘くない、たった16年間で、私はもう気づいてしまったのだ。
でも、もし、もしも、私にも運命の人がいるのなら……
運命の相手は、出会ったその瞬間にわかるって、そう信じていたいから……
いや、それこそ夢物語だな。ハイ解散。