風が吹いて君の髪を揺らした。


君は顔をあげて揺れる木から舞い上がる花びらを見ていた。


君はいつも、さみしそうな表情で美しいものを見るんだな。


視線を戻して歩きはじめる君の後ろで、僕もまた歩きはじめた。



君はどこまで歩いていくのだろう。


振り返ることもなく、ただ前を見て歩いていく。


怖くはないのだろうか。


ものを落としたことに気づくのだろうか。


つらいときでも、君は歩き続けることを選ぶのではないだろうか。



細く小さい君の背中を見て僕はほんのすこし期待をした。


「---。」


僕が君の名前を呼べば立ち止まるかもしれないと。


君の名前を呼ぶ、すこし掠れた僕の声が響いていた。