数奇な運命。血縁の無常。


名門私立高校で出会ったのは境遇の似た2人。


政治家の父を持つ浜辺琴と政治部記者である母を持つ三浦蓮は不運にも同じ学校に通うことになった。


かつて蓮の母親は財政省の大臣だった琴の父の不正献金を暴いてしまう。







しかし、それが報道されることはなかった。…



“衝動”





“それは生きる希望”





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かつての僕は何も無かった。













優秀な政治記者だった母は有名脳外科医の父と10年前に離婚しシングルマザーとして僕を育てた。

父は母校である慶誠高校に僕が進学するようであれば学費を高校、大学、留学費用、それに付随するすべての生活費まで出してくれる約束をした。


まだ幼い僕に何を期待したのだろう。

いや、それは期待ではないと大人に近づくにつれ気付かされた。









母は“ 早く自立しなさい” それが口癖だった。










言いつけを守り慶誠高校入学と共に実家を出た。










父は約束通り学費の全額支援、そして生活費として銀行口座に月15万。



学生には充分すぎるほどの金額だ。



暗に意味することは言うまでもない。















“ 金はやる。もう関わるな。 ”












そういうことだ。

一人で生きなさい。



入学直前に死んだ母は最後に凄まじい試練を与えた。

愛の意味を教えられる前に突然旅立った母の顔は妙にホッとしたようだった。




葬式に来る人はいない。



それほどに彼女も孤独だったのだろう。

密葬ということにした。



不思議と涙は出なかった。

悲しみより決意が勝ってしまったのだ。















母は僕が高校受験に突入する頃、記者を辞めた。



離婚の真相はここに書いてあるから大人になったら読みなさいと手帳を僕に渡した直後、天国へ旅立った。



死因は心筋梗塞だった。

唯一そばにいてくれた祖父と同じ。

違いは早すぎることだけだ。







僕は母の過去をすべて知ることになった。

それは昔愛していた人がいたこと。

結婚後も忘れられず愛してしまったこと。
















離婚した父は何も語らなかった。

家を用意されお金だけが振り込まれることになった。







正真正銘、僕は独りだ。