一緒にいなくちゃいけない人は、

作者ゆあ

 付き合って四ヶ月の彼氏がいる、主人公の美香。
 彼氏は周りからも「素敵な人」と言われるような人格の持ち主で、付き合いは上手くいっているけれど、美香には彼氏に言えない恋愛のトラウマがあった。

 恋愛の「当たり前」は本当に必ず全員が通る道なのか、考えた作品。

 夏が近づく季節でも、夕方になるとまだ涼しい。

 窓の外で、街は穏やかな橙色に染まっていく。

 せっかくの夏の夕方の雰囲気を味わおうと、置きっ放しにしてあったトレーナーをつかんでベランダに出る。

 Tシャツの上からトレーナーを羽織りながら、ふと同僚のナオミの言葉を思い出す。

「今まで拗らせってなんだろうって思ってたけど、美香の話を聞いてよくわかった」  

 そういえばこのトレーナーも、彼氏のものだ。

 今週末、いつものようにデートがある。

「言えてないことがあるんでしょ。伝えなよ」

 トレーナーを破りたい衝動にかられる。

 彼はきっと、私の告白に傷つくだろうから。