「身代金の交渉は進んでいるの? 私はいつになったらここを出られるの?」
「欲しいのは金じゃない」
「……え?」
「そもそも、そんな目的でキミを連れ出したわけじゃない」
この誘拐の目的は、果たして………?
あらすじ。
伯爵家の長女、マリーン・ラ・ミューレンは自らを低脳と自嘲し、落ちこぼれのレッテルを受け入れてきた。
令嬢が身につけるべき教養やお稽古ごとに関して、有能な妹、クリスティーナには遠く及ばず、いつも失敗ばかりで上手くいかない。
数年前にデビューした社交会でも、誰にも求められず、誰にも選ばれない。
しかしながら、このまま結婚もできずに屋敷に留まるしかないと思った矢先、素敵な紳士と出会う。
舞踏会の帰りに声を掛けてくれた男爵家の長子、エイブラム・ド・サミュエルに思慕に近しい感情を抱く。
男性との交流をすすんで行ってこなかったマリーンだが、彼との出会いを機に変わろうと決意をする。
そんな折、屋敷の裏庭で不法に入り込んだ男に突然攫われることになり……。
誘拐されたマリーンと実行犯の仮面の男。マリーンの過去の傷と罪悪感。そしてマリーンだけを溺愛する父親の思惑が、複雑に絡み合い交錯する。
この誘拐には何か特別な理由があるらしい。