エキエナの風はマリーゴールドに吹く

作者ユウユウ

カッサはカカオ農園で働く女の子。カッサは同じ農園で働くジブリルに憧れていた。

が、ジブリルが戦争に行くと言い出して。

◆戦場を選ぶ理由。


 カカオの実を、僕はすぐに落とさない。

だって、いつも君は下にいて、木の上の僕を眺めていたから。


「チリチリ頭の猿みたい」


コロコロと笑うコゲ茶の肌と真っ白い歯。

その手、指、君の傷を見つけるたび胸が泣いた。


銃声が響く。魂の抜け殻達の声が聞こえた。

生ある同志よ、この屍を踏み超えていけ。

生ある同志よ、戦え。国を変えるために。


燃えた太陽が瓦礫の向こうに沈んでゆく。銃声が沈黙し静寂が訪れる。銃を胸に抱き空を仰げば、星空の壁紙に浮かぶのは君の姿。


頭にドンノ、上に濁った水を揺らしたバケツを運ぶ君しか知らない。

あちこち破れ、乾いた泥で模様が隠れたワンピースしか知らない。

ナタを持ち、硬い実を割る君しか知らない。


『学校に行きたい』


君のその涙で、僕は戦場を選んだ。


『透明な水を飲んでみたい』


そのために命を賭ける。