晴菜ミク

本物の文学作品
上手い! というのが、この作品に触れた私の一番最初の印象でした。

互いにどこか歯車の噛み合わない愛であると知りながら、それでも自らを信じたいがために自らの心をだまし続ける、僕と卯月子、茜の三角関係がとても切ないです。

けれども、物語の主な舞台を学園とし、主人公を屈託のない明るい性格の男子高校生にしたことで、ドロドロとした人間模様を描いた大人向けのテーマをさらりと読ませてくれる、そんな作者様の技巧は素晴らしいと思います。

大胆でありながらまったく不自然さを感じさせない場面転換も、文章の中にキラリと光る音楽や芸術などの独特のセンスもとても魅力的で、読む者を飽きさせません。

特に、念願がまだ成就されていないことを示すひとつ目ダルマの存在が、私の心に強いインパクトを与えてくれました。