むにえな

出会いと成長が丁寧に書かれています
主人公の事情や気持ちが丁寧に描写されているので、感情移入しながら読むことができました。
ストーリーも奇をてらったものではなく、かと言って凡庸なものでもなく、きちんとまとまっています。
出会いと成長をし、過去に向き合い未来へと歩み出す主人公の姿は、実に勇気がもらえるものでした。

少し先の情景を書いてから、少し時間をさかのぼって説明の描写が入る箇所があります。
絵的な印象は残りやすいのですが、やや「唐突に何の描写が始まったのだろう」という無粋な感も覚えました。
話の流れで状況はすぐに分かるので、難点と言うほどではありません。

表紙の和歌にこたえるのなら、同じ百人一首から、
「君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな」
を挙げたいです。