C
紺碧の空のキャンバスを真っ二つに割いていく無垢なヒコーキ雲。
その絵を真正面から見つめていた。誰も邪魔できない。この場所は、あたしのテリトリー。鼻から空気を吸い込む。まだ、生きていられる。
音。聞いた事のない音がする。いや、一般的にはあるのかもしれない。でも、あたしはその音を知らない。その音が、あたしを動かす。耳を研ぎ澄ます。
どうか消えないで。
あのヒコーキ雲のように、消えていかないで。
ゆっくりと目を閉じる。世界が広がる。闇は無限だ。今はこの暗闇の中で足掻きもせず、ただ埋もれるだけ。微かなその音に少しだけ手を伸ばし、届くはずのない距離に耳を傾ける。
あの音はどこから聞こえるのか。いつかあたしを、ここから救ってくれるのだろうか。今はまだ・・・。