仰向けになった俺の腹の上に、少女が馬乗りになっていた。
右手には、よく研がれているであろうナイフが、月明かりに照らされ鈍い光を放っている。
彼女は言った
「これは人殺しではないです」
俺はよくわかっていると答えた。
よくわかっていた。
彼女が俺を殺したくないと思っていることも、
それをせざるを得ない状況に追いやったのが俺だということも。
「せめて、楽に......」
今夜は満月なのだろか。夜だというのに、彼女がよく見えた。
彼女は泣いていた。
俺の為に泣いてくれているのだ。
彼女はきっとわかっていたのだろう。
そのままナイフの切っ先を俺にむけた。
話したいことはたくさんあった。
でも、俺達には時間がなかった。
だから最後に。せめて最後に。
「─────」
俺の意識はそこで途切れた。
君は本当に優しかった。
優しさ……俺はそれを利用したんだ。