麻井深雪
雰囲気抜群、大人恋愛
結婚して夫がいるのにすれ違いの生活を送っている杏子と元彼、長谷川との雨の日の再会から物語は始まります。
今、幸せか?と聞かれ、杏子が走り去るシーンはまるでドラマのワンシーンように強い印象を残しました。
回想シーンでの恋人時代の二人は甘酸っぱく、出会いから別れまでが二人の視点変換を含みながら淡々と描かれます。
物語は切なさを含みながら展開し、けれど杏子が結婚している以上、少なからずドロドロとするんだろうと懸念しながら読みました。
だからこそ夫である健次の秘密と別れ方にはこんな展開が待っていたとは、と目からウロコでした。
そこには少しのドロドロもない、前向きな別れが待っていて、展開の持っていき方の上手さに感心しました。
夕焼けの観覧車も物語の雰囲気にぴったりです。
全体を通して落ち着いた文章が、大人のどこか物悲しい雰囲気を漂わせていて、すごくお話とマッチしていました。
内容もこのページ数にしてギッシリ充実しています。
それでいて丁寧な描写。
読み応えも十分です。
大人の方は特に楽しめる作品だと思います。