麻井深雪

辛い経験も幸せへの過程
高校生の頃、思春期ならではのすれ違いが原因で別れてしまった二人。

そんな拓馬が同じアパートの隣の部屋に引っ越して来るところから始まる物語。

嫌いで別れたわけじゃない二人だからこそ、再び火が点くのは簡単だけれど…。

子供がなかなか授からないことが原因で、離婚歴のある瀬里。
あの頃とは違う、痛みを持っています。

変わってしまった部分と、変わらない部分を確かめるように体を重ねる、という表現がすごく良く分かるなと思いました。

大人になった拓馬にもやはり過去がありますが、それでも包み込むような男性に成長した彼は素敵です。

瀬里の辛い経験も、拓馬の失った恋も、最終的に二人がこうして寄り添う為の過程だったんじゃないかと…。
もうこの二人ほどしっくり来る相手はお互いにいないんじゃないかと、

そう思わせてくれるような素敵なラストでした。
短編の時の余韻を残した終わり方も良かったですが、今回は二人の行く末を見届けることができて満足感を得られました。