綿森 霧絵

長年想い続けて実った恋が
静かに終わる所から始まる物語。
失恋の痛手を抱えたヒロインが自棄になって受けたお見合いの席でいつの日か雨に濡れ熱で倒れた所を救ってくれた医師の男と思わぬ再開を果たすというドラマチックな展開に自然と引き込まれました。
お見合い相手の渉はクールなイケメン医師。デリカシーがなくて無愛想で口が悪いと印象が良いのは顔だけで最初はなんだこの男はとヒロインと一緒に憤慨してました。しかし、交流を深めていくにつれて渉のさりげない優しさが見えそれに少しずつ惹かれていきました。しっとりと落ち着いた文章で徐々に二人が歩み寄っていく過程が丁寧に綴られています。
終盤、渉の歪んだ生い立ちが明かされた時ヒロインと共に胸が締め付けられ、渉が愛しくてたまらなくなりました。渉は最後まで口の悪い言い草だったけれどいつの間にかそういうところもまるごと全部大好きになっていました。
忘れてはならないのが元カレの太郎ちゃん。
彼とも意外な形で再開することになり、案の定彼を忘れられないヒロインの心情がとても切なかったです。

甘みを含んだタイトルに反してビターな大人味の恋愛小説。
大好きな大好きな作品です。