この地球には歴史が無い。
人類が歩んできた証となる物,過去の記録,それらは失われ,歴史を知る術も無い。
ある者は推測する。
古き時代のとある時,世界中の国々が,血で血を洗う凄惨な争いを起こした折,人類を残滅し,地球を滅ぼす程の兵器が使われた。
そしてその結果,人類は激減し,生態系は崩れ,空は兵器の影響から灰色に染まり,人類の築いてきた歴史という歴史は闇に消えた。
ある者は言う。
人類は,過去を失ったのだ,いや,自らの手で消し去ったのだ,と。
しかし,生き残った僅かな人類は強い生への執念から,また少し歴史を刻もうと歩みだす。
そんな中,突如として「レグナゲード」という組織が現れ,世界を牛耳る。
レグナゲードは,全ての人間の体に識別用チップを埋め込み,管理をしていった。レグナゲードは支配という形を以って世界をまとめ上げた。
それからほどなくして,人類に不思議な現象が起き始める。人類の「死」という概念が変化を見せる。人類は生命活動が停止すると,その身は何事もなかったかのように消え失せるという現象に見舞われる。
ある者は神が人類を神の国に導いてくれていると言い,ある者は地球が人類が地に還ることさえ拒んだ結果だと言う。
どちらにしても今までの死という概念を失い,死することはただ消えるだけという感覚に,人類は他を侵すことに何の感情も抱かなくなり,世界は混沌としていく。