はやくその毒を下さい

作者浅菜

『頭から爪先まで、俺はお前のものだよ』
チクリと刺した棘の、毒が体中に行き届いて完全に私を壊すまで、まだ幾ばくかの猶予はあるはず。だから、はやく、その毒を下さい




私は娼夫である彼の、極めて不透明な水槽の中で熱にうなされて、溺れかけている魚以下の存在だ。




好きとも愛しているとも言えないこの気持ちは、言葉では形容し難い。




ただ、彼が欲しくてたまらない。




私がわかっているのはそれだけ。





『頭から爪先まで、俺はお前のものだよ』





チクリと刺した棘の、毒が体中に行き届いて完全に私を壊すまで、まだ幾ばくかの猶予はあるはず。




だから、



はやく、はやく。



(その毒を下さい)





***こちらは別の場所にも載せていたものに手直しを加えたものです。