うのたろう

視覚効果ばつぐんの上質物語
これはすごい。
単純にそう思える上質な作品だ。

作品の内容は、うたのへたな小鳥が、うたいかたを教えてくれたオスの鳥に恋をするというもの。
小鳥は鳥を想うが、鳥にはすでに相手がいる。
それでも小鳥は鳥を想い、待ち続け、うたい続ける。
永遠に。

この物語のすごいところは、桜の木をはさんだ空のうえの世界だけではなく。
地上にもひとつの人生(物語)があるということだ。

空のうえの鳥の人生。
地上の人の人生。

このふたつを同時に見せることで、平面になりがちな童話の世界を、立体的な現実のものへと昇華させている。
この見せかたが、たまらなくうまい。

個人的なベストは地上の人生を担当する桃架が「こける」という部分。
しかけの散りばめかたがうまい。

また。
ラストで桜の木が見せる特殊な咲きかたもよかった。
文章が視覚的につたわってくる。

かなしい話だ。
けれどもこの物語には、春の日ざしのように、希望に満ちた明るさがある。
そして、肌寒いけれど、どこかあたたかい春の温度がこの作品にはある。

おすすめだ。