ギガイ・クオン
深遠の果てに
導入部は確かに凡庸である。ありきたりのお涙頂戴的な筋道、それをただ辿る。
なのだが一転、物語半ばにて視点が変わり、空気が入れ替わる。ここまで読者が思い描いたモノとはまた一味ちがう趣旨、それが提示される。
ああ、なるほど、本題はコチラ側だったのかと……
しかし、結局それすらも裏切られる。待ち受けるは意表を突くラストシーン。そこは屋外でありながらも静寂の底。質素に、そっと、優しくふたりを包みこんでいる。いつまでも、いつまでも。
冒頭の数頁のフツーさ、そこに周到な計算を見いだせたならば、この著者の非凡さに畏敬すら覚えるはずだ。