栗栖ひよ子
あなたにかかる、二重の魔法
りおさんは、ショート・ショートの魔法使いだと思う。
優しくて分かりやすいのに、実は巧みな言葉で、私たちをやすやすと、鏡の中の世界に引き込んでしまうのだ。
それも、私たちが気付かないうちに。
鏡の世界に引き込まれていたことには、作品が幕を下ろして初めて気付く。
その時の、ときめきに彩られた驚きは、まるで幸福な夢から、目を醒ました時のよう。
魔法はとけても、私たちの心には、キラキラと輝くときめきが残るのだ。
この作品の主人公は、美容師さんによって魔法をかけられた一人。
美容師さんにときめいてしまったことは、誰でも少なからずあるはず。
美容室という、非日常の空間、密室のマジック。
それをりおさんは最大限に利用し、巧みに演出しています。
丁寧な描写による、美容師さんの一挙一動に、男の人の色気も、優しさも、恋のときめきも感じられて、胸がドキドキしました。
魔法にかけられた女の子にりおさんがかける、二重の魔法。
あなたも、鏡の中の世界に引き込まれてみませんか?