ずっと働き詰めだった私は、毎日変わらない日常にこのままでいいのか?と感じる様になり、今の仕事を辞め1年自分探しの為、海外へ行く事にした。
そして、一人旅は初めての為、窓側の席で雲を眺め、今から始まる素敵な出逢いに、まだ離陸していない機内で胸を踊らせていた。
すると隣の席に男性が座った。
私と同じ世代だろうか…そして、香水なのか男性からはとてもいい香りがした。
これから長旅の隣同士で宜しく。との意味も含めて会釈した。
男性も微笑み会釈をした。
数分後、機内が動きだし無事に離陸した。
……まもなくして、機内食サービスが始まり、機内が賑わいだした。
機内食を運んでいるCAさんがチキンとフィッシュどちらにするか?と次々聞いて回った。
(よし。私はチキンにしよ。)
そう、考えていると回ってきたCAさんが、まず手前の男性に聞く。
「チキンで。」
CAさんが私を見て「いかが致しますか?」
「私もチキンで。」
かしこまりました。とワゴンを見やる。すると…
「大変失礼しました!チキンがおひとつだけで、後はフィッシュになってしまうんですが…」
すると男性が「じゃあ、俺フィッシュでいいですよ。」と微笑みフィッシュのコースを受け取った。
私は男性に「いんですか??」と申し訳なさそうに聞いた。
「ええ。大丈夫です。どちらも好きなんで。構わず食べてください。」そう彼は言った。
それを見てCAさんは申し訳なさそうに頭を下げ次の席へ向かった。
私は「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」と微笑みご飯を食べた。
(何だかいい人。これからの旅もいい事が起きそう…)
ご飯を食べて、食後に飲み物を飲んでいると隣の男性が話し掛けてきた。
「お一人で旅行ですか?」
いきなり話し掛けられたのでびっくりしたが「あ、はい。そうなんです。」
男性は「いいですね。」とコーヒーをにこやかにすすった。
私は男性に「そちらも旅行ですか?」と聞いてみた。
男性は「いや…違うんですけどちょっと仕事で…。」と言葉を濁していた…。
(…?ま、いいか。)
そうして、何時間ものフライトを終え着陸し少ししてから、男性が「素敵な旅になるといいですね。それでは。」と男性は出口へ向かって行った。
その後に残る彼の残り香を感じながら、身支度を済ませ出口へ向かった…。