うのたろう
連鎖
リズム感のある文章のなか、主人公「ぼく」の純粋さがどこまでも苦しい。
物語は「めぐまれない国のめぐまれない人々の一生の生活」。
そんなふうに表現すれば、それはたんなる日本人のエゴになってしまう。
「ぼくのママ」が嫌いなニッポンジンに。
こどもだった「ぼく」は、物語が進むにつれ、やがておとなに成長する。
父が死に、したっていた兄が死に、そしていつしか自分までもが死に近づいていっている。
その予兆が、ごほんごほんというせきだ。
翼を手にした主人公は、不幸の連鎖を自分でとめようとしている。
「ぼく」がもとから持っていた純粋さに、兄からもらった強さがプラスされている。
ただかなしいだけじゃなく。
不幸といっしょに幸福だって連鎖している。
人間も捨てたもんじゃないなと思わされる、そんな希望もかくれている。
童話であるが、物語としても秀逸。
たしかに5分で読める物語でもあるので、だまされたと思ってぜひ一読を。